専攻と仕事の対応度
全国の調査から分かること
「大学で学んだ専攻と、今の仕事はどれくらい関係しているか」は、専攻によって大きく違います。
- 経済産業省の調査(2018年1月、30〜50代の有職者・大卒以上5,280名、RIETIのディスカッションペーパーが分析)では、正規雇用の男性で「関係している」が22.6%、「どちらかと言えば関係している」が24.3%、合わせて46.9%でした[S0701]。正規雇用の女性は21.9%と19.2%(合計41.1%)、非正規雇用では「関係していない」が男性58.4%、女性60.1%に上ります[S0701]。専攻分野別では医・歯・薬が突出し、次いで工学と教育が続きます[S0701]。
- JILPTの調査(回答者20,311名)では、最初の仕事を「IT系の専門・技術・研究職」「IT系以外の専門・技術・研究職」「文系職種」に分けています。情報工学専攻の80.2%はIT系の専門職、建築学専攻の72.4%はIT系以外の専門・技術・研究職に就いています[S0700]。工学専攻ではIT系以外が55.5%、IT系が26.7%です[S0700]。
- 文系専攻は様子が違います。法律・政治は81.5%、経済・経営・商学は75.1%が「文系職種」に就き、文系専攻全体で7〜8割が文系職種、1〜2割がIT系の専門職です[S0700]。文系職種の中身は、事務職36.1%、営業職34.4%、管理職7.1%です[S0700]。
- 研究者の論考も、文系の大卒者は「大学で学んだことと今の仕事の関連が希薄だと認識していることが多い」一方、関連があると感じる人は賃金も満足度も高い傾向がある、と述べています[S0702]。
注意点として、これらは調査対象者の自己評価で、調査時期も2018年(S0701)、2025年(S0700)と異なります。S0700は正社員で専攻・現職・初職の条件を満たした回答者に限られ、文系56.9%・理系43.1%という内訳も調査の定義によるもので、大卒者全体の割合ではありません[S0700]。
明治大学の学部・学科はどうか
下の表は、2026年3月卒業者(学校の表記では2025年度)の業種別就職データから、専攻に関連づけた業種へ進んだ人の割合(指標A)を計算し、高・中・低に分けた推計です[S1001][S1202]。指標・閾値・対応表の定義は専攻との関連度を参照してください。60%以上が「高」、30%未満が「低」、その間が「中」です。
結果は、「高」が0、「中」が9、「低」が13でした。最も高いのは理工学部情報科学科の58.3%、次いで総合数理学部 先端メディアサイエンス学科の53.9%で、60%には届いていません。物理学科(4.8%)、文学部の文学科(5.1%)、心理社会学科(3.1%)は特に低い値です。
芝浦工業大学と日本大学はどうか
芝浦工業大学:判定はデータ不足
芝浦工業大学は、2026年3月卒業について学科別の就職内定率と大学院進学者数は公表していますが、業種別・職種別の就職者数は公表していません[S2000][S2500]。学科別の「主な就職先」も各学科5社の企業名だけで人数がなく[S2500]、指標Aを計算できません。そのため、芝浦工業大学の対応度は全単位が「データ不足」です。工学系の学科が多く、専攻と仕事の対応は強いと予想されますが、データで確かめられていないため、ここでは「高」とも「低」とも判定しません。
日本大学:50単位を判定
日本大学は、学部・学科が公表する産業別の就職者数から指標Aを計算できた50単位を判定しています。内訳は高13、中12、低25です(推計)。指標・閾値は明治大学と同じ(60%以上が「高」、30%未満が「低」、その間が「中」)で、定義をご覧ください。医学部・歯学部・松戸歯学部・薬学部は、卒業後の進路(臨床研修医や薬剤師など)を職種で対応づけた値で、業種ベースの他の単位とは基準が異なります。
傾向は次のとおりです。
- 「高」は、建築系(理工学部の建築学科・海洋建築工学科、生産工学部と工学部の建築系学科)、情報系(文理学部情報科学科、理工学部応用情報工学科)、土木・機械など工学部の一部学科と、国家試験のある医・歯・松戸歯・薬学部に集中しています[S5660][S5991][S5997][S6654][S6656][S6657][S6658]。
- 文理学部の人文・社会・理学系の多くは「低」で、学部全体のAは8.6%です[S5332]。明治大学の文学部と同じく、専攻を問わず就職できる業種が多いことが背景にあります(全国調査でも文系の7〜8割が文系職種に就いています)[S0700]。
- 理工学部の学部全体は24.2%(低)ですが、学科によって幅があります(応用情報工学科83.2%、物理学科8.2%)[S5660]。学部の水準だけで学科の対応度は分かりません。
- 生産工学部の機械工学科は、指標B(企業の募集職種が専攻を限定する割合)が73.7%と使える水準ですが、Aが55.6%で60%に届かないため「中」です[S5991]。それ以外の単位は指標Aだけで判定しています。
データの限界
- 法学部・経済学部・商学部・国際関係学部・スポーツ科学部・芸術学部・生物資源科学部(獣医学科を含む)・生産工学部の一部学科・工学部の学部全体などは、対応度の判定がなく「データ不足」です。業種だけでは専攻との対応を決めにくい、または学科別の就職者数の公表がないためです。
- 日本大学の業種別データは学部によって公表形式が異なります。理工学部[S5660]・生産工学部[S5991]・工学部[S5997]は学科別の産業別就職者数、文理学部は学科別の産業分類の円グラフ(整数%、分母の記載なし)に基づきます[S5330]。
- 学科別の対応度は、卒業者のうち進路届の提出者ベースなど、学部ごとの母数の違いを含みます[S5660]。単位間の細かな差は目安にとどめてください。
文系の学部がデータ不足か「低」になる理由
法学部、商学部、政治経済学部、経営学部、情報コミュニケーション学部、国際日本学部(および各学科)は、対応度の判定が「データ不足」です。文学部は計算できましたが、4単位すべてが「低」です。理由は次のとおりです。
- 専攻を問わない募集区分がある。 例えばヤマハ発動機の事務系は「全学部全学科」[S0715]、NEXCO中日本の事務は文系・理系を問わず全学部・全学科が対象です[S0719]。国家総合職の試験区分も、専攻を受験資格とはしていません[S0714]。司法試験も学部の専攻は受験資格ではなく、法科大学院修了か予備試験合格が条件です[S0721]。
- 専攻と結びつく資格・職種が、業種では表せない。 法・経済・経営の関連づけは、国家総合職の試験区分[S0714]、税理士試験の受験資格[S0710]、司法試験[S0721]など「職種・資格」を根拠にしています。ところが明治大学が公表しているのは業種別の就職状況だけで、職種別は公表されていません[S1001]。業種ベースの指標Aでは、これらを数えられません。
- 文学系は業種の対応づけが薄い。 文学部は教員免許の取得ルートがある教育業を関連業種としていますが、教員免許は専攻を問わず取得できます[S0712][S0724]。文学部で教育業に進んだ人は6.5%にとどまり、指標Aは低くなります[S1202]。
つまり「低」は、仕事で学びが役に立たないという意味ではありません。全国調査でも、文系専攻ではどの専攻でも7〜8割が「文系職種」に就いており、専攻と職種の対応そのものが弱いことが分かります[S0700]。
計算方法の注意
- 業種ベースの代用指標です。 就職先の職種が分からないため、業種の対応で近似しています。同じ業種でも、職種によって専攻との関係は変わります。
- 親業種の合算を使います。 専攻が製造業や金融業の細分類(例:電機、銀行)に対応づけられていても、大学が製造業・金融業の合計でしか公表していない場合は、その合計(親業種)を関連業種として数えます。この規則は、業種の公表単位が粗いことへの対応です。
- 指標Bを使うのは文学部(学部全体)だけです。 企業の募集職種が専攻を限定するかどうかを見る指標Bは、職種データのある企業が主な就職先の人数の30%以上をカバーする場合にだけ使う規則です。現状この基準を満たすのは文学部(学部全体)だけで、B=13.1%を判定に使っています(推計)[S1003]。Aが6.5%と30%未満なので、Bの有無にかかわらず結果は「低」です[S1202]。それ以外の21単位は指標Aだけで判定しています。
- 結果は推計です。 理系の志望業界の調査[S0704]は学生の志望であり、採用実績ではありません。
高校生・保護者のみなさんへ
- 文系学部は、学部名より「どの業種・どの職種を目指すか」で将来が決まります。専攻と結びつく資格や試験(税理士試験、国家総合職の試験区分など)を目指すなら、受験資格や試験区分を早めに確認してください[S0710][S0714]。
- 理系は、専攻と仕事の関係が強い分野(情報・建築・医療系)と、そうでない分野があります[S0700][S0701]。理論的性質の強い分野は、直接合致する求人が多くないと指摘されています[S0702]。明治大学でも物理学科や数学系は「低」です[S1402]。
- 「低」を見て学部選びを悲観する必要はありません。学部の学びと進路の幅を、データ不足の部分も含めて確認してください。各学部のページには、学科ごとのカードを載せています。